こんにちは。なにわt4eです。洋書チャレンジ、7回目でございます。今回は第8章、ミッジ・ユーロが世界にその名を知らしめます。
※お断り
洋書チャレンジの記事において、引用文は特に断りがない限り全て私の訳です。
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ウルトラヴォックス 初ヒット!
1月20日の昼下がり、2人のクリスが顔を見せた。「どうしたんだよ?」と私たちは声をそろえた。(P.73)
シン・リジィでの活動で、ミッジ・ユーロは後々までかかわることになる2人のマネージャー、クリス・モリソンとクリス・オドネルに出会いました。1977年11月、グラスゴーアポロのシン・リジィのライヴを観た後のことです。その2人が1981年の冬、小汚い町の(だってミッジがそう書いてるんだもん)リハーサルルームでリハーサルを繰り返すウルトラヴォックスの4人に持ってきた突然の知らせとは?
「チャートに入ったぞ」彼は説明した。「2度もだ。両方のチャート──シングルとアルバムの両方だよ」(P.74)
前年7月にリリースしたアルバム『ヴィエナ』と、そこからのシングルがともに全英チャートに入るヒットとなった知らせでした。彼らがこの時期ヒットさせた曲としてはタイトル曲「ヴィエナ」が有名ですがこれは3枚目のシングルなので他の曲、恐らく「パッシング・ストレンジャーズ」「ニュー・ヨーロピアンズ」のどちらかでしょう。優雅なスローナンバー「ヴィエナ」も好きですが、「ギャーッギャ、ギャラッギャ」のダイナミックなギターで幕を開ける「ニュー・ヨーロピアンズ」やちょっと東洋風でスケールの大きな「ウェスタン・プロミス」が私はもっと好き。「ニュー・ヨーロピアンズ」は三宅一生が登場するウイスキーのCMソングに起用されたので、現在(2024年)にアラフィフの方ならご存じでは?
ともかくウルトラヴォックスに初の商業的成功をもたらした『ヴィエナ』は力強いバンドサウンドとキザでニヒルな美意識が融合した、現在も聴き継がれる傑作です。
美意識だけではありません。冒頭の「アストラダイン」がいきなり7分越え、しかもインストゥルメンタル(ヴォーカルなしの曲)だったり「ミスターX」でテクノを前面に押し出したりラストの「オール・ストゥッド・スティル」のスピード感がパンク的だったりと、実験精神が旺盛な作品でもあります。
フロントマンがジョン・フォックスだった初期ウルトラヴォックスはYMOや平沢進、布袋寅泰、ジャパン、ゲイリー・ニューマンなど多くのミュージシャンに影響を与えているもののパンクからエレクトロニクスに移行していった音楽性が斬新すぎたのか、ヒットには恵まれませんでした。そこへもってきてアルバム・シングルの同時チャートインです。ミッジは仰天し、信じられなかったとも書いていますが、そりゃそうだよね。
お祝いのどんちゃん騒ぎで午後は仕事にならなかった。(P.74)
加えてウルトラヴォックスと別に参加していたヴィサージも「フェイド・トゥ・グレイ」がヨーロッパ中でトップ10入りする大ヒット。
だけど貧乏は続く
一躍その名をとどろかせ、当時すでにビッグネームだったジェネシスのドラマー兼シンガー、フィル・コリンズからもトップ・オヴ・ザ・ポップスで「あなたがミッジ・ユーロですね」とあいさつされる存在となった(P.75)ミッジでしたが、印税が入るまで数か月のタイムラグがあったおかげで貧乏生活は続きました。毎朝毎晩、おしっこくさい電話ボックスで事務所に確認の電話を入れる羽目になったと書いています。どうして電話ボックスがおしっこくさいかと言いますと、イギリスで長く過ごした方はご存じかもしれませんが不届き者がトイレ代わりに使うことが多かったから。今は改善されてるようですが、80年代当時はそうだったようです。ミッジの自宅には電話がなかったので、やむなく寒さに震えながら鼻をつまんで電話をかけていたのだとか。(P.75~76)
華麗にヒットを飛ばしたイメージの強いミッジですが、実は苦労人なんですね。もしかすると、貧しい労働者階級の生まれでミュージシャンとしてもしばらく貧乏生活が続いた彼だからこそ、後年ボブ・ゲルドフとともにバンド・エイドを立ち上げたのかもしれません。正確にはボブから声がかかり、それにミッジが応じたという流れ。
ミッジはウルトラヴォックスとヴィサージに並行で参加していて、1980年にウルトラヴォックス『ヴィエナ』とヴィサージ『ヴィサージ』、1982年にウルトラヴォックス『カルテット』とヴィサージ『舞─ダンス─』が発表されています。『舞─ダンス─』発表後、ウルトラヴォックスに専念するためミッジはヴィサージを離れますが、忙しい人だなあ。そのあたりは次回にて。お楽しみに!
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