洋書チャレンジ! Midge Ure ‘IF I WAS…’編 パート6

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 こんにちは。なにわt4eです。洋書チャレンジ、6回目でございます。今回は第6章、ミッジ・ユーロがシン・リジィに参加します。

※お断り
 洋書チャレンジの記事において、引用文は特に断りがない限り全て私の訳です。

目次

1979年、パンクは瀕死?

1979年、サッチャー政権が始まった。ロンドンはよどんだような街となり、誰もが貧しくなった。人々は何かに逆らわねばならなかったが、パンクはもはや瀕死の重傷だった。(P.58)

 この年にはクラッシュが代表作『ロンドン・コーリング』を発表しており少し後にはパンクの流れをくむザ・ジャムが台頭するので、まんざらパンクが勢いを失っていたわけではないような気がしますが、ミッジ・ユーロの目には「パンクはもはや瀕死の重傷」と映っていました。筋金入りのパンクスではないもののパンク・ムーヴメントが生まれる場面に身を置いていた彼としては、サッチャーが「弱肉強食・自己責任」を柱とする新自由主義に基づいてイギリスを動かし始めたことはパンクの衰退(の、一つの現れ)と思えたのかもしれません。パンクが「何とかしろ!」と叫んでも「自己責任だ」で返ってくるわけですから。
 
 もっともパンクもおとなしく引き下がっていたわけではなく、私がパンクに不案内なので詳細は控えますがパンクからのサッチャー批判も盛んでした。

フィル・ライノット、そしてシン・リジィ

 1979年7月、旧友フィル・ライノットから一本の電話が入ります。「今ツアーでウィスコンシンにいるんだ。ゲイリーがバンドから消えた。明日来てくれるか?」(P.61)フィルが主催するシン・リジィは二人のギタリストがリードギターを務めるツインリードというスタイルで有名でしたが、その二人のうち一人、ゲイリー・ムーアが失踪してしまい、代役として急遽ミッジ・ユーロに白羽の矢を立てたというわけです。
 シン・リジィはアイルランドの音楽や文学の伝統を野性味あふれるハードロックに持ち込んだバンドで、今なお世界中に熱狂的なファンがいます。また、ツインリードというスタイルを確立したバンドとしてイギリスのウィッシュボーン・アッシュを外すことはできません。  

 もっとも、シン・リジィでの活動を楽しみつつもミッジ・ユーロは自分をゲイリー・ムーアの後釜として適任とは思っていなかったようです。

彼らが探していたのはエースギタリストであって、私のようなオールラウンダーではなかった。(P.64)

 確かにゲイリー・ムーアが伝説的な名ギタリストであるのに対してミッジ・ユーロは、少なくともギタリストとしての評価はあまり高くありません。事実、ウルトラヴォックス加入後1作目『ヴィエナ』で前面に押し出されたミッジのギターはダイナミックで聴き応え満点ですが、ゲイリーに引けを取らないプレイかと言われると答えに窮します。  
 ただミッジはシン・リジィでの活動を楽しんでいました。

ツアーは本当に素晴らしかった。私は心から楽しんだ。私は子ども時代に夢見たギターヒーローだった。(P.64)

 そんなミッジを、そしてシン・リジィを悲劇が襲います。リーダーにしてミッジの盟友、フィルが薬物の過剰摂取で亡くなったのです。正確にはヘロインによる内蔵の感染症と敗血症。鼻にかかった独特の歌声は、ヘロインを鼻で吸う内に鼻の骨が溶けたゆえのものと言われています。

医師の言うにはヘロインの過剰摂取による肝臓、腎臓、心臓の不全、そして肺炎ということだった。(中略)私は彼の葬儀に参列しなかった。そのことを悔やんでいる…だが結局のところ、私たちの誰にもフィルにしてやれることはなかった。(P.70)

 ミッジがフィルの葬儀に参列しなかったのは、新婚旅行のさなかに電話でフィルの死を知らされたため参列したくても駆けつけることができなかったという事情と思われますが、彼の心中は察するに余りあります。

 もしかするとここは「そのこと(葬儀に参列しなかったこと)を悔やんでいる」というより「死ぬ間際のフィルのそばにいてやれなかったことを悔やんでいる」という意味合いかもしれません。原文ではこのようになっています。

I wasn’t there for his funeral; I wish I had been…but in the end there was nothing any of us could do for Phil. (P.70)


 またこの時期ミッジはキーボードプレイヤー、ビリー・カリーの誘いでウルトラヴォックスに参加、その一方ではスティーヴ・ストレンジを擁するヴィサージにも参加していました。そのあたりは次回にて。お楽しみに! 

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この記事を書いた人

名もなき大阪人、主食は本とマンガとロックです。

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