洋書チャレンジ! Midge Ure ‘IF I WAS…’編 パート8

 こんにちは。なにわt4eです。洋書チャレンジ8回目、ヴィサージを脱退するに至ったミッジ・ユーロの思いとは?

※お断り  洋書チャレンジの記事において、引用文は特に断りがない限り全て私の訳です。

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目次

ラクダ騒動

「ラクダって何のことだ?」私は割って入った。「スティーヴがラクダに乗ってプレスの前に出たがってるんだ」私はひっくり返った。(P.79)

ニューヨークでのプロモート中の一幕です。スティーヴ・ストレンジはラクダに乗ってプロモートの場に現れようとしていました。それにずっこけたミッジ・ユーロは「スティーヴがラクダに尻を乗っけるときは俺が辞める時だ」と宣言しますが、スティーヴはラクダに乗って現れてしまいました。

 それ以前にもスティーヴのヘロイン乱用やバカ騒ぎにはうんざりしており、加えてクレジットをめぐってラスティ・イーガンともめたことも脱退の一因だったようです。ミッジはプロデューサーとして大金をせしめたかったわけではなく、クレジットに名前を挙げる形で敬意を払ってもらいたかったのですが、ラスティはジャン・フィリぺなる人物からあれこれ吹き込まれてクレジットの件でミッジと対立しました。ただ、

2~3年の後、私たちはシェパーズ・ブッシュ(引用者注:ロンドン西部にある地区)にある日本料理店ヒロコで会った。(中略)私たちは相変わらず友人同士だ。(P.82)
私にウルトラヴォックス加入を最初に提案してくれたのはもちろんラスティだった。(P.83)

 ともあるので、長年の対立ということではなかったようです。  

 そしてミッジはこうも語っています。

アーティストの集合体というコンセプトは急進的なものだった。(中略)ヴィサージはウルトラヴォックスが絶対に到達できなかったテリトリーに入っていった。フランス人はヴィサージを愛してくれた。(P.78)
初めのうちは誰もが本当によくしてくれていたからだ。しかしヴィサージにかかわる人が多くなり過ぎて何もかもひどい方向に進んでしまった。(P.81)

 固定的なメンバーから成立するバンドというより創造的な人物の寄り集まりだったヴィサージを、ミッジは愛していたようですね。

売り出しはつらいよ

 もっともそうした形態ゆえに売り出しでは苦労して、レコード契約もなかなか取れなかったようです。第9章の冒頭付近でいきなりミッジは

どこのレコード会社もブリッツ(引用者注:ヴィサージ誕生のきっかけとなったクラブ。当時、イギリスの音楽シーンを牽引していた)といったらスパンダー・バレエだと思っていた。誰もがスパンダーと契約したがっていたのだ。当時あったのはレコードを作ってはツアーに出るというサイクルをえんえん繰り返すグループ、あるいはそういうシンガーだった。「プロジェクト」というものはなかった。だから人々がヴィサージの全体的なコンセプトを避けたのは不思議ではない。目に見えないグループ、バンドならざるバンドという概念が理解できなかったのだ。(P.77)

と愚痴っぽく述懐しています。異端児ヴィサージを当時の音楽シーンは持て余していたのかもしれません。とは言え、捨てる神あれば拾う神あり。

MOD(引用者注:クリス・モリソンとクリス・オドネル)はヴィサージをアメリカのいたるところで売り込んでくれた。するとニューヨークでポリドールを経営するジェリー・ジャフェがほれ込んでくれ、コンセプトを気にせず世界中で売り出す契約をして125000ドルの前払いをしてくれた。(P.77)

 おかげでヴィサージは1980年、イギリスで1作目『ヴィサージ』のリリースにこぎつけました。
 それにしても、2作目は原題”The Anvil”(金属を叩いて鍛えるための金床。比喩として、試練を乗り越えるための方法やものごとの重要な工程をさすこともある)に対して邦題が『舞──ダンス──』…なんでこの邦題?

でもヴィサージは歴史を変えた

それはさておき、他にもスティーヴがうまく歌えなくてレコーディングが難航したり、歌詞をフランス語に翻訳したことでえらい出費を余儀なくされたり、ヴィサージは結構なトラブル続き。

  ですがこのヴィサージが後にデュラン・デュランやスパンダー・バレエ、カルチャー・クラブ、そしてミッジ・ユーロが参加するウルトラヴォックスなどに代表されるニュー・ロマンティックの嚆矢となったこと、今もヴィサージの根強いファンがいることは事実。ヴィサージ自体は長続きしませんでしたが(そもそもそんな気はなかったのかも)、間違いなく彼らは音楽の歴史を変えました。

 さて次回はミッジ・ユーロ加入後のウルトラヴォックスが本格的に動き始めるお話です。お楽しみに!


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この記事を書いた人

名もなき大阪人、主食は本とマンガとロックです。

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