こんにちは。なにわt4eです。洋書チャレンジ11回目、のちにバンド・エイドにつながったミッジとゆかいな仲間たちをご紹介します!
※お断り
洋書チャレンジの記事において、引用文は特に断りがない限り全て私の訳です。
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ボブ・ゲルドフとの出会い
私とボブが知り合ったのは、リッチ・キッズとして初めてロンドンで演奏した時だった──もっともボブは覚えておらず、「きっとろくすっぽ印象に残らなかったんだろうな」と言い張っている。(P.101)
ボブはけっこうボロカスです。ミッジがきれいな旧式のポルシェ356を買ったと車の自慢をした時も「もっと運がよければどうにか新しいのを買えただろうな。とは言えまずはましな曲を書くのが先だろうけどよ」(P.103)と返す始末。
ボブ・ゲルドフは音楽による飢餓救済を目指してミッジとともにバンド・エイドを立ち上げましたが聖人君子からは程遠く、むしろ歯に衣着せぬ物言い、はっきり言えば口の悪さで有名でした。
ブライアン・マスターズ『人はなぜ悪をなすのか』(←Amazonの紹介ページへ飛びます)に紹介された、こんなエピソードからもボブがいかに遠慮会釈なくものを言う人物かがうかがい知れます。時のイギリス首相サッチャーが、一口に飢餓救済と言っても金の調達や納税者に対する責任という問題があるから簡単ではないと話すのに対してボブはこう答えました。簡単なことだ、簡単だということをこれから見せてやる、と。「鉄の女」「ミルク泥棒(※)」の異名を持つサッチャーが二の句を継げず唖然としたのはこの時だけでした。(ブライアン・マスターズ『人はなぜ悪をなすのか』、P.199)
とは言えミッジはそんなボブを毛嫌いするでもなく、むしろ彼との交流はミッジにとって快いものでした。
私たちの友情はゆっくりと育った。ボブは私にとってベストの相棒ではなかったが、会うといつも楽にしていられた。(P.104)
だからこそボブもバンド・エイド立ち上げの際、真っ先にミッジに声をかけたのでしょう。最近子ども向けの伝記でスティングやエルトン・ジョンなどが取り上げられていますが、ミッジとボブも取り上げてもらいたい。音楽による飢餓救済プロジェクト、バンド・エイドの発起人として子どもたちに伝えるべき人物ですよ。USA・フォー・アフリカすら彼らの後追いだったのですから。
※…サッチャー政権前のイギリスは福祉が手厚い反面、国際的な競争力に欠けていた。これを打破する一環として彼女は学校における牛乳の無償提供を廃止。これに反発する層から「Margaret Thatcher, Milk Snatcher(ミルク泥棒のサッチャー)」と呼ばれた。
ポーラ・イエーツってこんな人
そのボブ・ゲルドフの恋人であり後に奥さんとなったTV司会者、そしてミッジの友人でもあったポーラ・イエーツはどんな人物だったのでしょう?
彼女は野心があって頭もよく、間もなく全国紙の記事を書いたりTVの仕事をしたりするようになった。美人で、ボブの恋人で、ザ・チューブ(引用者注:イギリスの音楽番組)の司会もしていたので、ポーラは当然のごとくニュースヴァリューがある人物だった。(P.102~103)
今で言うバリキャリ、でしょうか。非常に精力的に働き、実力もあった人物です。もっとも少なくともこの当時、ポーラはあまり料理上手ではなかったようで…。
ポーラはパン粉で包んで焼いたマスを出してくれた。料理の本に載っているかと思うほどの見栄えだった。ところがあいにくなことに、パンをおろして魚にまぶすのではなく彼女はパックのパン粉を買ってきていた──と思っていたら実はアップルクランブル(引用者注:ポロポロ砕ける生地をリンゴにまぶした菓子)用のミックスだった。それを生焼けのマスに盛大にぶちまけていたわけだ。吐き気がした。 「心配ないよ」よせばいいのに私はこんなことを言った。「腹は減ってない。マクドナルドに寄って来たんだ、念のため」(P.103)
言わなきゃいいのに、とは思うもののミッジの気ぃ使いな人柄がしのばれて、私はここを読むとクスッと笑ってしまいます。
のちに離婚するもののボブとポーラはいい夫婦だったようで、ミッジはこんな風に述懐しています。
ゲルドフがある日曜日、フィフィのおむつを買いにやらされた時は驚いた。私は励ましのつもりで一緒に行った。父親であるとはどういうことか分かってなかったからだ。当時子どもがいたのは彼だけだったが、今ならそれもなすべき務めのうちだと分かる。彼らはとても仲のいい家族だった。つまり、子どものことを大切にしていたのだ。彼女は子どもたちを溺愛していた。本当に良い母親だった。
私はポーラのことをそんな風に記憶している。(P.104~105)
ちなみに2人の結婚に際して、ボブの花婿介添人を務めたのはデュラン・デュランのヴォーカリスト、サイモン・ル・ボン。あまり指摘する人はいませんがサイモンは音域が広く、特に低音域に強いという珍しいタイプです。「セイヴ・ア・プレイヤー」「ニュー・ムーン・オン・マンデイ」を口ずさめばお分かりいただけるでしょう。
さて次回は第12章、いよいよウルトラヴォックスはがむしゃらに突っ走ります。お楽しみに!
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