洋書チャレンジ! Midge Ure ‘IF I WAS…’編 パート10

 こんにちは。なにわt4eです。洋書チャレンジ10回目、新作『ヴィエナ』の反響は? 本作の成功がミッジにもたらしたものは?

※お断り
 洋書チャレンジの記事において、引用文は特に断りがない限り全て私の訳です。

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目次

『ヴィエナ』の反響

 レコード会社は当初「ヴィエナ」のシングルカットに難色を示していました。曲が長すぎる、というのが主な理由。「ボヘミアン・ラプソディ」や「マッカーサー・パーク」じゃあるまいし、と主張していたようです。もっとも「ヴィエナ」も5分あるかないかなので、そんなに長い曲でもないのですが、当時としては長かったのでしょうか。しかしシングル向けの編集をバンドは断固として拒否、そのままお披露目ライヴへと進みます。聴衆の反応やいかに?

レコード会社の社長クリス・ライトは、満員御礼となったハマースミス・オデオンのショウを見に来た時このことを考えた。それまでおとなしかった聴衆が、私たちが「ヴィエナ」を始めると一転して立ち上がり、それから絶対座ろうとしなかった。後でライトは楽屋裏に来て私たちに言った。「降参だ。君たちが正しい。手を加えずにリリースしよう」(P.89)

そして全英チャートでも2位まで上昇。 バンドとしてはしてやったりの心境だったかも。

 ところでこの「ヴィエナ」、サビの歌詞は「こんなの私にはどうだっていい、どうだっていい、ヴィエナ(オーストリアのウィーンが英語だとヴィエナになる)」となっています。何だこりゃ? と思っていると、ミッジがこんな風に解説していました。

いつも「ヴィエナ」は何を意味するのかと不思議がられた。それについて私たちは時々嘘の説明をした。NMEのインタヴューでウィーン分離派やグスタフ・クリムト、世紀末ウィーンで起きていたこと全てについて数時間話した。そういったことはみんな、私たちの音楽を興味深く聞かせるためのデタラメだった。
 「ヴィエナ」は休日のロマンスを歌ったラヴソングであり、美しい場所に出かけて特別な人に会うことについての歌だ。休日のロマンスを大いに楽しみ、それを永遠だと誓うもののひとたび家に帰って9時から5時の仕事を再開すると誓いは消え失せる。家に帰って一週間もすると記憶の片隅に追いやられてしまう。「あんなものどうだっていいんだ」と言うもののそれは嘘で、ウィーンでの素晴らしい時間を思い出す。あんな時間を過ごしたい、でももう終わったんだ──永遠に。あれは現実じゃない。(P.90~91)
アイデアの全部がでっち上げだ。私はウィーンに行ったこともなかったし休日のロマンスもなかった。(P.91)

 バンドのいたずら心を感じさせる一節ですね。聴く人の知的好奇心を「ヴィエナ」はうまくくすぐっています。そして「ヴィエナ」のプロモーションヴィデオで展開されるクールでどこか退廃的な映像美について、ミッジは誇らしげにこう語ります。

今日ヴィデオでよく見られる手法を生んだのは私たちだ。恐らくオーソン・ウェルズの映画『第三の男』から私たちは無意識に「ヴィエナ」のインスピレーションを受けていたが撮影中はそれに気づかなかった。何年も映画を観ていなかったからだ。(P.92)

ミッジ、大金持ちになる

 第11章「上流階級の生活」冒頭はこんな一節。

人間を変えるのは金ではなく、称賛だ。ヴィサージとウルトラヴォックスで私は突然に成功してしまったし、そうした成功はミュージシャンを傲慢にしかねない。私は傲慢ではなかったと思いたいが、他の人たちは私を傲慢だったと記憶しているかもしれない。(P.93)

 金ではなく称賛が人間を変える…実体験に基づくものかどうかは不明ですが、ミッジの洞察に説得力を感じます。
「ヴィエナ」のヒットを契機にいわゆるグルーピーが、それまで一体どこに隠れていたのかと思うほど大勢群がるようになりました。この自伝全体にミッジの控えめさや堅実さがうかがわれるものの、彼女らに手すら一切触れなかったわけではなく、それなりに夜を過ごしたことが書かれています。先の一節は、この時のことを振り返ったもの?

 他には家を買ったりインテリアをそろえたりと羽振りよくしてはいたものの

私はお金の使い方が決して上手ではなかった。(P.96)

と振り返るようにお金がらみの失敗談が山ほどつづられています。例えばクラシックカーを買ったはいいがポンコツだったり、ヘルス・エンジェルズにハーレーを盗まれたり。家に関しては

私の古いメゾネット(引用者注:2階建ての住居が長屋状に並んだ集合住宅)はターナムグリーン・テラスにあって、1階が不動産会社だった。これが私にはぴったりだった。何しろわたしは日中ずっと外にいるし夜は下の階に誰もいないから好きなだけ音を出すことができた。(P.96)

と書いてるので、いい買い物してると思うんだけどなあ。

 さて次回は第11章後半、ボブ・ゲルドフやその恋人ポーラ・イエイツとの愉快な交友関係に触れる予定です。お楽しみに!

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この記事を書いた人

名もなき大阪人、主食は本とマンガとロックです。

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