『GIVE&TAKE』(アダム・グラント)与える人・もらう人・帳尻を合わせる人。もっとも豊かな人は?

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(架空の人物・美濃達夫さんに本書をご紹介する、という設定で書いております)

「なにわt4eさん、よく『ビジネスはギブ・アンド・テイク』と言いますがそうそういつもきれいに成立するとも言い切れませんね」

 そうですね、「ギブ・アンド・ギブ」の人がいたり「テイク・アンド・テイク」の人がいたりしますね。

「私の取引先の方もそこに興味を持ってアダム・グラント『GIVE&TAKE』という本を読んだそうです」

 そうなんですか!?それで、その方は何とおっしゃってましたか?

「とても面白くて勉強になった、とのことでした。なにわt4eさんは読まれましたか?」

 実は私も最近読んだところなんです。

「ははは、それで普段以上に食いついてこられたんですね」

 そういうわけです。

目次

「どんな本ですか?」

 いわゆるギブアンドテイクの観点で人を3つのタイプに分け、もっとも成功するのはどのタイプの人かを考えた本です。3つのタイプと言うのは、
 ・テイカー:もらう人
 ・マッチャー:もらう・与えるの帳尻を合わせる人
 ・ギバー:与える人
です。美濃さんはどのタイプがもっとも成功すると思いますか?

「テイカーじゃないのはなんとなく分かります。マッチャーでしょうか?」

  グラント氏はギバーがもっとも成功すると結論付けています。ただ興味深いことに、もっともパッとしないのもギバーだそうです。

「トップもドンジリもギバーなんですか?」

 そうなんです、面白いでしょう。

「ギバーだといいようにこき使われたり食い物にされたりしませんか?」

 そう思いますよね。与える一方でやせ細るギバーや食い物にされるギバーがいることにもグラント氏はちゃんと触れ、ギバーがギバーのままで成功する方法を考察しています。
 また、昔と違ってチームで働くことが多く、交通網やインターネットが発達した現代はギバーの活躍が加速するともグラント氏は書いています。チームで働く環境は人に与える機会も多く、人同士がつながりやすい環境はギバーの評判も伝わりやすいことを理由にあげています。

「どんな例が紹介されてますか?」

 第5章にある眼鏡販売店のエピソードが特にわかりやすいと思います。その店で調査したところ最も売上高が多い販売員は、商品の魅力をまくしたてて売り込むテイカーでも店をひいきにしてくれればメリットがあると持ち掛けるマッチャーでもなく、お役に立ちたいのであなたのことを教えてくださいと質問するギバーだったというのです。逆にテイカーが失敗する例として、アメリカの著名な建築家フランク・ロイド・ライトやポリオワクチンの開発に携わった研究者ジョナス・ソークをあげています。ライトは自ら孤立したことで窮地に陥り、ソークは手柄を独り占めしたため周囲に見捨てられ自分もそれ以降目立った業績を残せなかったそうです。

「情けは人の為ならず、ということですか」

 見事に要約されましたね、私より本書をよく理解しておられますよ。

「ありがとうございます(笑)。なにわt4eさんはどんな感想を抱かれましたか?」

 とても面白くて、2回続けて読みました。主張自体の興味深さもさることながら、紹介された様々な人物やエピソードがこれまた面白いんです。大規模な不正会計事件エンロン・スキャンダルの中心人物ケネス・レイと、買収交渉の相手が奥様を亡くされたと知って二億ドル値引きしたジョン・ハンツマン・シニアの対比ではそれぞれの企業が出した年次報告書の表紙が紹介されているんですが、レイの写真はまるまる1ページを埋め尽くしているのに対してハンツマンの写真は片隅にちょこんと載っているだけ。テイカーがいかに「俺が俺が」の精神でいるか、という例です。ケネス・レイだけに例です。

「……(苦笑)」

  他に私が目を引かれたのは、第3章で証券会社のアナリストが会社を移ったらどうなるかの調査です。

・投資銀行では、証券アナリストはリサーチを行なって業績予想を示し、資産運用管理会社に企業株式の売買について提言する。(P.127)

 そうしたアナリストの凄腕は転職先でも大活躍できるかどうかを調査したわけです。その結果は?

・平均して、会社はスターアナリストを雇ったことで約二四〇〇万ドル(約二十四億円)失っていたのである。
業界関係者の考えとは裏腹に、グロイスバーグらはこう結論づけている。「スターを雇うことは、スター自身にとっても、雇う側の会社にとっても、利益をもたらさない」(P.128)

 常日頃から互いに協力するチームあればこそのスターであってチームなしに会社を移っても活躍は難しい、逆にチーム丸ごとで転職したアナリストは転職先でも成功を収めているというのです。以前ご紹介したジル・チャン『静かな人の戦略書』(←当ブログの紹介記事へ飛びます)にこれとよく似た記述があり、グラント氏への言及もあったので驚きました。ちなみに書かれたのは『静かな人の戦略書』の方が後です。

・「スタープレーヤーは過大評価され、ロールプレーヤー(補助的な役割の選手)は過小評価されている」(ジル・チャン『静かな人の戦略書』P.278、作家マイケル・ルイスの発言)
・各チームがあらゆる選手関連データの統計解析を行ったところ、スタープレーヤーとの巨額の契約は、ロールプレーヤーとの契約にくらべて費用対効果が低いことがわかったのだ。(同P.284、強調は原文のまま)

まとめ

 本書はチマチマした仕事術・成功術の本ではなく、グラント氏の個人的な思い込みを書きつらねた本でもありません。心理学の様々な研究や知見、実例にもとづいて、人間の生き方・世界のあり方にまで踏み込み、さらには動かそうとする本です。監訳者の楠木建氏は、訳されただけあって『GIVE&TAKE』の本質を以下の通り大変ユニークに洞察しておられます。

・薄っぺらな自己啓発書だと、「悔い改めよ」とか「これからはこういうことをしなければならない」とか、あっさりいえば「がんばれ!」という話に終始することが多い。
これに対して、著者の発想と主張は一八〇度異なる。「がんばるな」というのである。ギバーであることは、考えてみれば人間の本性だ。(P.9)

「本当の成功とは何か」「人間とはどういう生き物か」ビジネスまたは人間の心理について、そこまで踏み込んで考えたい方には強くおすすめの一冊です。

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この記事を書いた人

名もなき大阪人、主食は本とマンガとロックです。

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